外国人から見た日本のここが不思議 ”牛乳の巻”

2017.03.13

斎藤牧場 旭川市

子牛を舐める母牛 at旭川の斉藤牧場

日本にいると当たり前だと思えることでも、海外から日本に移住した人には、不思議に思えることが色々あるもの。

今回は日常にありふれた牛乳のお話。

明治天皇が牛乳を毎日2回飲んだことが知れるようになっていたとは言え、一般庶民が牛乳を気軽に口に出来るようになったのは、戦後になってからです。 子供の頃に一緒に住んでいた明治生まれのお婆ちゃんは、毎日お風呂上がりに牛乳を1本飲んでいて、それを孫達にも飲ませてくれていました。町中に牛乳屋さんがあって、毎朝瓶に入った牛乳が配達されていた時代です。

完全栄養食と言われ、昭和30年代後半頃から学校給食に必ず牛乳が1本つくようになって、牛乳を飲む習慣は、日本人の間にも広まりました。

近所のスーパーに買い物に行くと必ず10種類程度の牛乳は、どこでも並んでいます。 美味しさを誘うネーミングの商品や、低脂肪をうたっている商品、はたまた産地にこだわった商品などが並んでいます。

ところが、大方の一般のスーパーでなかなか見かけないのが、低温殺菌と表示された牛乳です。

『低温殺菌』それがどうしたの? 他の牛乳に比べて高い、と知っている方は、多少の関心を持って牛乳売り場を歩かれたのではないでしょうか。

そう、『低温殺菌牛乳』は、他の商品より一般的に3割ほど高いのです。
しかし、これが世界的にみて、特殊な状況であることは意外と知られていないのではないでしょうか。

そもそもその『低温殺菌』とは、普通の牛乳とどこが違うの? その価格差に見合うメリットはあるの? という疑問が湧くことでしょう。

パッケージを読むと66℃で30分殺菌などと書かれています。 一方、一般の牛乳はと言うと、120℃で2秒殺菌されています。 超高温瞬間殺菌と呼ばれる方法です。 この超高温瞬間殺菌が先進国で一般的なのは、日本とオランダだけだと聞きました。

先日、日本でナチュラルチーズの製造をされている方の話を伺いました。
チーズは言うまでもなく、生乳が材料になります。 それを熱にかけて殺菌する際に、60℃で30分の低温殺菌にしないと、レンネットと呼ばれる凝乳酵素を投入してもチーズにならない、と言うのです。 それはそれ以上の温度で熱すると固形タンパク質のカゼインと液状タンパク質であるホエーが熱分解してしまうからだそうです。

こう言う話を聞くと、益々多少は高くても低温殺菌の牛乳を買いたくなってしまいます。 栄養素に変化はない、とは言われますが、超高温ですとタンパク質が変性してしまうことは間違いないようです。

低温殺菌牛乳欧州などに行きますと、市販の牛乳はそもそも全てが低温殺菌なので、わざわざそんな表示はありません。 日本の一般的な牛乳で行われている超高温瞬間殺菌法は、元々発展途上国の栄養対策用に、まずは手っ取り早く牛乳を供給する為に開発された製法でした。 それが、生産サイドでは、低コスト(30分かかる工程がわずか2秒になるメリットは大)化する大きな要素の一つと判断され、採用されていった、とこちらの本で知りました。

ですから、本来は超高温殺菌牛乳の方が、そのような表示をすべきなのかも知れません。 これはちょうど、有機野菜などと言いますが、本来野菜は無農薬で作られていたのであり、現在の通常流通している野菜の方にこそ、化学農薬使用野菜と言うべきことに似ているかも知れません。 勿論、そんな言い方はマーケティング的にとても出来ないことではありましょうが、実態はそう言うことかと思います。

これとは別に、日本の牛乳は妊娠中の牛からも搾乳されている、と言う実態があるそうで、女性ホルモンを知らず知らずに大量摂取している可能性も指摘されています。 また、環境ホルモンなども乳には濃縮されて存在される、とも言われています。ホルモンは超微量で私達の体に大きな変化をもたらす代物です。 脅かすつもりはありませんが、それらは、食べ物から、呼吸する空気から、また皮膚を通して私達の体に侵入します。

この件に関しては、以下の引用をご参照ください。

”現在の日本の子どもたちは、化学物質などの環境ホルモン物質や植物エストロゲンに加えて、本来は性ホルモンの分泌が始まる前には存在しないはずの女性ホルモンを、牛乳を摂取することによって多量に口にしています(1)。現在、日本で市販されている牛乳には女性ホルモンが多量に含まれています。”

“日本で販売されている牛乳は、妊娠中の雌牛からも搾乳されます。雌牛は生後14ヶ月になると人工授精で妊娠し、仔牛に5日間授乳したあとは、人用の牛乳生産のため搾乳されます。出産後3ヶ月で人工授精させられ、出産する2ヶ月前まで妊娠中も搾乳されます。”

“実際に販売されている牛乳を調査した結果では、卵胞ホルモン(エストロゲン)は妊娠していない牛から搾乳された牛乳に比べて1.5~2倍、黄体ホルモン(プロゲステロン)は6~8倍も含まれています(3, 4)。牛乳加工品中の濃度も高く、調整粉乳にも含まれていると思われます。女性ホルモンは細胞性免疫を抑制して感染症に対する抵抗力を落とし、IgE(免疫抗体の一種で一般にこの値が高いとアレルギーが起こりやすい傾向あり)の産生を亢進させてアレルギーを起こしやすくさせる作用があるため、牛乳に含まれる過剰な女性ホルモンが発達過程にある小児の免疫・神経・生殖(とくに男児)に影響する可能性は大きいと思われます。妊娠牛からの搾乳は70年ほど前から行なわれてきているため、70年前から先進国を中心に世界中の子どもたちが女性ホルモン含有量の多い牛乳を飲んでいると考えられます。”

(引用元オリジナルURI:http://homepage2.nifty.com/smark/Milk-EST.htm)

牛乳では、もう一つ知っておくと面白いことがあります。

ノンホモ牛乳それは、時々牛乳のパッケージに書いてある『ホモゲナイズド』と言うことです。 これは乳脂肪分を小さく砕いてあるので、牛乳を置いておいても乳脂肪が上に浮いてこないように加工された牛乳、と言う意味です。

低温殺菌牛乳は、スーパーでも少数派とは言え、数軒回るとなんとか購入できますが、ホモゲナイズド(均一化された、という意味)してない、いわゆる『ノンホモ』と呼ばれる牛乳は普通のところでは、まず見つけられません。 有機食材のお店でようやく見つけられる代物です。

当番は、以前にイギリスで民泊した際に、朝食用に瓶に入って届けられる牛乳がノンホモであったのに感激したことがありました。 ノンホモですと、牛乳の上に脂肪分が浮いてくるのです。 この脂肪分のことが、本来の『クリーム』と呼ばれるものです。 ですから、このノンホモ牛乳で浮いてくるクリームから、家庭でも本物のバターも作れるし、ケーキなどに使う生クリームも作れる、と言う訳です。

私達の生活に物が溢れていますが、同時にそれは選択を迫られているとも言えます。 目に見えないもの、環境ホルモンの脅威は、たいそう深刻です。 『奪われし未来』とならないよう、危険の少ない選択をしていきたいものです。

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