アーユルヴェーダ・クイズ回答します

2016.03.19

先日グループ静坐会のメール配信しました際に、アーユルヴェーダ・クイズなるものを書いておきながら、その回答のほうがどこにも記入してありませんでした。

もったいぶるような内容ではありませんので、以下に当番なりの回答を書きます。

 

a)インドでは家庭でナンと言うパンが主食のようになっている?(ウオームアップです)

回答:日本のインドレストランに行って食事を注文すると、ほぼ決まって、ライスですかナンですか?と聞かれます。 ナンお願いします、とお願いすると紡錘形をした大きな平べったいパンのようなものが供されます。 てっきりインドの人はナンを主食のようにしているように思ってしまいます。

毎日の食卓にチャパティ

毎日の食卓にチャパティ

このナンなるパンのようなものは、オープンキッチンのインドレストランなどでは目にすることができますが、昔の焼き芋のつぼ焼きに使われたような壺の内側にナンの生地を貼り付けるようにして焼いています。 その壺はタンドーリと呼ばれるものですが、あんな壺はインドの一般家庭では見た事ありません。 少なくとも、当番が訪ねた事のあるご家庭にはありませんでした。

インドの方に伺っても、ああいうナンを焼けるような壺は、レストランに行かないとないでしょう、との事。 一般家庭では、チャパティと呼ばれる全粒粉を丸く薄く伸ばした生地を、鉄板の上で焼いたものを食べています。

まあ、どうでもいいことですので、ナンでもありません、とこの質問はなかったことにしていただきます。

 

b)インドの人が体調を崩した時は、普段からアーユルヴェーダ医師にかかっている?

回答:これはあくまで一般論です。 インドの方が体調を崩した場合、都会ですと、真っ先に西洋医学の医師の元に行くのが普通だそうです。 そもそもアーユルヴェーダの医師の診断を受けよう、というのは選択肢に入っていない、という感じです。

日本では、大正時代末に臼井甕男師によって始まった霊気と言う手かざしの治療法があります。 しかし、日本国内ではあまり知れ渡ることなく、その手法が”レイキ”として欧米から逆輸入されるような形で日本にて認知度が高まリました。

インドでのアーユルヴェーダもそれに似ています。 インド大陸由来であっても、むしろ20世紀後半に欧米で注目されるようになり、それを印僑として海外に住んでいたインド人が、インドに戻り、地元のアーユルヴェーダ医を使うようになってきたようなところがあります。 これはざっくりした説明ですから、簡単に決め付けられませんが、このようなニュアンスはあります。

 

c) アーユルヴェーダの治療では、オイルのマッサージや額にオイルを垂らす(シロダーラ)施術が主流である?

回答:インドの方もアーユルヴェーダ医に診察に訪れる人はいます。 その場合の治療は、生活習慣の指導と薬草の処方が中心になっています。 その薬草を自分のところで作ることがアーユルヴェーダ医たる所以、という感じです。

薬草をすり潰します

薬草をすり潰します

ところが、自分で作っていてはとても手間がかかるので、今はそういうアーユルヴェーダの薬を作る会社がたくさんあります。 例えばケララ州というアーユルヴェーダが盛んな南の州では、1000社以上の薬草製造会社があります。 家内工業的なところが大半ですが、全国に販売網を持っているような大きいところもあります。

アーユルヴェーダ医師は、戦前のように自分で薬も作る、ということをしなくても、そういう会社から買ったもので患者さんに提供できます。 また、処方箋だけ書いて、アーユルヴェーダの薬局から買ってもらう、ということもしています。

前置きが長くなりましたが、オイルマッサージや額にオイルを垂らすのは、パンチャカルマと呼ばれるデトックスの為の施術のことになります。

シロダーラ・数分で桃源郷へ

シロダーラ・数分で桃源郷へ

地元のインドの方は、よほどの重症でない限り、薬草を飲む治療止まりで、パンチャカルマをうけられる方は、超少数派と言ってもいいような感じです。

そのパンチャカルマの施術ですが、50種類近くあります。 最低3週間と言われるパンチャカルマの施術を受けても、只の一度もオイルマッサージが含まれていない、ということもよくあります。

シロダーラというのは、仰向けになって額に液体をゆら〜りと垂らしていく30分〜45分の施術です。 これも日本では、オイルを使うことが多いようですが、勿論それもありますが、薬草で煮出したミルクやバターミルク(無脂肪ヨーグルト)も、インドでは頻繁に行われます。

 

d)アーユルヴェーダの医師は誰でも脈診を使って診断する?

回答:アーユルヴェーダの診断=脈診、と言ったイメージが一部にあるかも知れません。 当番自身、インドの聖人の方の主治医を務められた2名のアーユルヴェーダ医師の診察を受けた経験がありますが、お二人とも脈診は一切なさいませんでした。

診断では、触診、望診、問診があります。 脈を診るのは触診の一種ですが、使わないアーユルヴェーダ医も多くいます。 アシュタヴィアジャと呼ばれるアーユルヴェーダの8つの医学領域全てに精通している、と言われる医師の方々は脈診を使われません。

患者を観て判断される望診をされ、そして問診の為の質問をされます。

脈診は、アーユルヴェーダ医の家系に産まれ、幼少の頃からトレーニングを受けても、素質というか向き不向きがある世界のようです。

 

e)近年俄かに注目されている腸内フローラを整える、いわゆるプロバイオティック(善玉菌を増やす食品)として、古代アーユルヴェーダ文献の中で賞賛される飲み物は、ヨーグルトを水で割ったラッシーである?

回答: 私たちの腸の中には約1.5kgもの細菌が生息している、と聞くと驚くかもしれません。 これまでは基礎医学の研究者の方々の多くの努力がありましたが、酸素のある環境を嫌う腸内細菌は培養が難しく、その実態はわからないことの方が多かったようです。 それが、人のDNAを全て解析してしまったヒトゲノム計画によって発達した技術によって、ここ10年ほどで腸内細菌叢の組成や構造がかなりわかるようになりました。

それにより私たちの健康に腸内細菌叢の状態が、かなり直接的に影響していることが次々と判明してきています。

前の質問の回答で登場しますパンチャカルマという施術は、身体のデトックスとして知られる方法ですが、体内からのアーマ(不純物)を消化器管のルートで排出することが、頻繁に行われます。(勿論、患者さんごとに医師が判断するわけですが)

アーユルヴェーダの古代の知見の中で、あたかも現代の知見である腸内細菌叢(腸内フローラとも呼称されます)を予見しているようなことがあります。 それがヨーグルトを希釈した飲み物です。

ミントを添えたバターミルク

ミントを添えたバターミルク

最も推奨されるのが、牛乳からフレッシュなヨーグルトを作り、その後に脂肪分を取り除いたものです。 これを地元では、バターミルクと呼ばれています。 名前の頭にバターと付くので、乳脂肪分があるような印象を受けますが、そうではなく、無脂肪ヨーグルトを指します。

細かいことですが、ここでのポイントは、無脂肪牛乳からヨーグルトを作るのではなく、絞ったままの牛乳からヨーグルトを作った後に乳脂肪分を除去する、という点です。 これにより失った脂肪分を回復しようとする性質を持ったバターミルクが出来る、ということだそうです。

そこでようやく回答ですが、ラッシーというのは普通のヨーグルトを水で希釈したものです。 アーユルヴェーダで賞賛されるのは、むしろバターミルクと呼ばれるヨーグルトを希釈し、それから乳脂肪を除去した飲み物、ということになります。

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