暑い夏・飲んだペットボトルはどこに消えた?

2018.07.27

大阪のソウルフード

大阪のソウルフード(写真ACより)

大阪人のソウルフードたこ焼き。本場に行くと中がトロトロなのが好まれるとみえて、そういうたこ焼きが多い。
 
出来たてをホイッと口に放り込んだら最後、口の中が猛暑となり、口から吐き出す訳にはいかず、かといって飲み込んだら喉まで火傷しそうでそれも出来ず、絶望感に打ちひしがれながら、苦渋に悶えたことはないでしょうか。
 
羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く、とばかりに出来上がったたこ焼きに竹串で穴を開けて蒸気を抜いて食べると、大阪の人に笑われてしまう。 喉元過ぎれば熱さ忘れる、と言われるが、喉元にこないと熱さを感じないのが人の悲しい性(さが)なのだろうか、とまた昨今感じる映像が、10日ほど前からSNSなどで拡散している15秒のこちらの映像

カリブ海の島国ドミニカ共和国の海岸に押し寄せたプラスチックゴミの量にびっくり。 しかし、本当にビックリはこれがほんの氷山の一角中の一角だということ。
 
スターバックスが、全世界の店舗で2020年までには全てプラスチック製のストローを廃止すると発表したニュースを聞いた方は多いはずです。 これが実現すると冷たいドリンクのフラペチーノを頼むと、口をつけてそのまま飲めるようになってるプラスチックの蓋がつけられるか、どうしてもストローで飲みた〜い、という人には紙製のストローがついてくるのだとか。
 
スタバの全世界の顧客の2人に1人は、プラスチックのストローがつく飲み物を注文しているそうで、世界で毎年1億本使われているそうです。 この廃止の引き金になったのは、3年前に米国の海洋学者が撮った海亀の鼻に刺さったストローの救出劇の8分間のビデオでした。
 
これまでに3200万回再生されたそのビデオが多くの人の琴線に触れ、それがプラスチックストローの廃止に向かったのは素晴らしい第1歩に違いありませんが、現状はとてもそんな生半可な対策ではニッチモサッチモ立ちいかなくなっています。
 
思えばこんなに身の回りがプラスチックなどの石油化学製品で溢れるようになったのは、ここ50年ほどの話。 それ以前は、昼ごはんのおにぎりだって『竹の皮』や『経木』(きょうぎ)と呼ばれる白木の薄い皮で包まれていました。
 
お弁当箱だって竹を編んだものか、アルマイトという金属製のものが一般的でした。
 
町の商店に買い物に行っても、肉屋さんは経木に包んでくれたし、魚屋さんで買うお魚は新聞紙でくるまれていました。 それで水がポタポタ落ちますが、天然素材の買い物かごの隙間から水は落ちていってくれました。

経木で包んだおにぎり野菜だって新聞紙で包んで渡してくれたし、モヤシなど買うと新聞紙でコーンの形状にしてその中に放り込んでくれました。 納豆も藁に包まれていたり、和菓子屋さんのおはぎ餅だって経木で包んでくれました。
 
そうほんの50年ほど前の食品包装材は、土に還ってくれる(横文字でバイオ・ディグレイダブル)ものばかりでした。
 
それが今やそれらの天然系の包装材や容器は絶滅危惧種となり、石油化学製品でないものを見つけるのは至難のわざです。
 
体温を上回る気温が珍しくなくなった日本列島では、熱中症対策で水分をこまめに取るようにアドバイスされると、外出先で飲み物を買うことが多くなります。
 
ここでもペットボトルだったり、プラスチックカップ入りのドリンク、はたまたプラスチックのストローまでご丁寧についたもので渇いた喉を潤します。 そして、そのペットボトルやカップは、一回使うとゴミとして捨てられていきます。
 
プラスチックは結構リサイクルされているのでないの、と思っても実際は世界的にみると10%未満です。
 
日本は世界一のゴミの焼却大国ですが、それでも焼却場の建設が簡単に増やせないこともあって中国などに輸出されていましたが、その中国も昨年2017年12月からゴミの輸入を全面ストップしてしまい、受け入れ国も量も減って、日本国内でゴミが積み上がっています。
 

富士山と波

(blueocean.netより)

このプラスチック製品は毎年800万トン以上が世界中の海に流れ込んでいるそうで、すでに流れてしまった総量は1億5千万トンくらいでは、と推測されています。
 
この量は1年間に世界中で生産されるプラスチックの約半分が海に投げ込まれている感じになります。
 
”宇宙船地球号”の内部では、分解されないプラスチックが積み上がり、毎年製造される3億トンのプラスチックの約3%が海の中に流れ込んでいる現実。 ウミガメや海鳥がプラスチック片を大量に食べていることを、自分に関係ない人ごとに出来ない事態が進行中です。
 
実は海中に捨てられたり、流れついたりしてであろうプラスチックのかなりの量が消えている、というのです。
 
海の表面に漂うプラスチックは、紫外線の影響や波にもまれて小さなプラスチック片になっていくことは想像できます。
 
実際、海の中のマイクロプラスチックはどんどん微細に分解されているらしいのです。
 
ここでもう一つ知っておきたいことがあります。 海には都市や農地からの排水に含まれるPCBだとか農薬などの化学物質が流入しています。
 
そこにプラスチックは親油性であるがゆえに、別の化学物質(ほとんどが脂溶性すなわち油に溶けやすい)が引き寄せられどんどん表面に溜まったり、中に入り込む現象が起きて、周囲の海水の10万倍から100万倍にも濃縮されてしまうそうです。
 
ですからプラスチックが体内に入ると、当然ながら環境ホルモンなどの化学物質も取り込んでしまうことになります。
 
さて、プラスチックは、微生物に分解されて土に還るのに何百年もかかる、だから環境を汚すと言われてきました。
 
ところが海に漂うプラスチックに、なんとプラスチックを食べるバクテリアが発生していることがわかったのです!!!(ウッズホール海洋研究所、米国マサチューセッツ州、ミンサー博士の2016年の発見。この研究所は1985年に大西洋に沈んだタイタニック号を発見したことでも有名です)
 
例えばポリ袋などに使われるポリエチレンは、炭素と水素だけで出来ているので微生物は消化出来ません。 また分子が大き過ぎて直接食べることは出来ません。 そこでその新種のバクテリアは、酵素を自ら出してポリエチレン粒子を酸化させます。 次に別の酵素で炭素と水素の結合を切っていく。
 
こうしてポリエチレンを食べやすい小さな分子に分解していくのだそうです。
 

豊かな海

(plasticoceans.orgより)

生物の多様性と進化の凄さを思い知らされます。 これなら海の汚染は歯止めがかかる、と思うのは早計です。
 
実際はその為に、直径2ミクロンほどになったマイクロプラスチックを、魚類がエサとして取り込み、それが腸管から吸収されてしまっています。
 
2ミクロンと言われてもピンとこないかも知れないですが、吸い込むと肺の奥に到達して血液にまだ入ってしまうと恐れられる『PM2.5』の粒子は、まさに2.5ミクロン以下のもののことでした。 髪の毛の直径は60ミクロンほど。 肉眼で見える限界は100ミクロン(0.1ミリ)ほどですから、2ミクロンが如何に小さいか想像つくと思います。
 
植物プランクトンが食べるれる小ささになったマイクロプラスチックによって、ついにプラスチックが食物連鎖に組み込まれてしまった!!! ということは、食物連鎖の頂点に立つ私たち人間の体に溜まっていく、ということです。 魚を食べることは、同時にプラスチックを食べている!!! ということになりかねません。
 
以前にこちらのブログで地球の温暖化の大きな歯車が回り始めてしまっていることを書きましたが、プラスチックの食物連鎖への流入のサイクルも始まってしまいました。
 
マイクロプラスチックという時、今使われている定義では直径5ミリ以下のものとされています。 直径5ミリなら肉眼で見えます。
 
また、プラスチック製品という時、ペットボトルやスーパーなどで使われるポリ袋など食品関連で使われるものなどをイメージをしがちですが、それ以外に化学繊維の衣料品を洗濯した時の排水にはたくさんの小さな小さな”化繊のうぶ毛”が含まれています。
 
それは下水処理をされても多くは川から海へと流れていき、超マイクロプラスチックとなって、魚の口の中に入っているのでした。
 
しかし、問題はそれがさらに小さくなって、魚の消化管から吸収されるまで小さくなり、血流に乗って各臓器に到達してしまっている、という現実は、もう背筋が凍る事実だと思います! 一人当たりの魚介類の年間消費量が50kg.弱と、世界でトップ3に入る日本人には見過ごせない現状です。
 
また思い出したいのは、プラスチックは化学物質を吸着して高濃度汚染物質になっていることです。 ですから、プラスチック片が腸から吸収されて血管に入り込めるほど小さくなっていなくても、口から体内に取り込まれるだけで、高濃度の化学物資に臓器はさらされることになります。
 
ベルギーのゲント大学が地中海のムール貝で調査したものでは、100%全てのムール貝の内臓から超マイクロプラスチックが見つかっています。 貝の場合は内臓も食べるので、より危険度が増すことでしょう。
 
また、アイルランド国立大学の研究結果は、2018年2月に学会誌に発表されましたが、大西洋沖数千キロメートル、水深600メートルの深海魚233匹を解剖して調べたところ、その73%に当たる魚の胃からマイクロプラスチックが出てきたそうです。
 
中には体長3.5センチの小魚の胃から、13個のプラスチック片が出てきたそうです。
 
3年前になりますが、2015年に東京農工大のグループが東京湾で釣ったカタクチイワシ 64匹を調べたところ、8割のイワシの内臓からマイクロプラスチックが見つかったそうです。
 
2018年6月8日〜9日にカナダのケベック州で開かれた主要7ヶ国首脳会議では、2030年までにプラスチック代替品に切り替える『海洋プラスチック憲章』がまとめられましたが、日本と米国だけは署名を見送りました。
 
私たちの遺伝子DNAは、化学物質にさらされると損傷が起きやすくなることが知られています。 DNAの損傷は、ガンを含めた病気を引き起こす可能性が高まる、ということに直結します。
 
自然界に存在しない、人工的にが作り出された物で『完全に安全なもの』はないです。 程度の差こそあれ、ある程度のリスクがある中で、社会全体がこれこれのリスクまでは許す、という一律の線引きに合意することは、人それぞれの立場が違うので、たいへん難しいことになります。
 
ということは、個人の責任で私たちが何を食べるかを選んでいかなければならない、という厳しい世界にいるということになります。
 
出来立てアツアツのたこ焼きを食べる時、口に放り込んでからでは取り返しがつかないので、口に入れる前にしっかりと『見極めて』いく必要があるのと同じです。 それはトロトロの中身の熱さだけでなく、中のタコが何を食べて育ったものかも想像しながら。
 
©天空庵”禁無断転載”
 
*おまけの映像集 and Some:
 
1. 海洋汚染の実態を知らしめようと国連が2017年に作った7分間のビデオ
 
2. TEDという講演サイトにあった、捨てられたプラスチックの行方を追った4分間の映像
 
3. 海からの贈り物。 最近バリ島沖に潜ったイギリス人ダイバーが見た海の中の景色が2分間の映像
 
4. 世界の海の潮流に乗って流れる様子を描いた3分間のビデオ

敬愛する祖父

Beloved Grandpa

5. 当番が5歳の夏休み、親の田舎の農家に滞在中、ガラス瓶に入ったコーヒー牛乳を買ってもらいました。 都会ではストローで吸って飲んでいたので、祖父に『ストローが欲しい!』とせがみました。 その時の祖父の困ったような表情が忘れられません。 少し農家の家の周辺をウロウロした祖父は、稲の藁を見つけて、それを切って『ホラ、これで飲め』と渡してくれました。 こんなのストローじゃない!って思ったのを覚えていますが、仕方なくそれで飲みました。
 
ストローという言葉が、『藁』のことだと知ったのは、大人になってからでした。 祖父は、本物の”ストロー”を渡してくれていたのですね。
 
海亀の鼻に刺さったストローのビデオは見ていて心が痛みますが、日本で作られるお米の藁で作られたストローを使っていれば、こんな悲劇は起きなかったと思い至りました。 改めて、こちらが世界で3200万回再生されたコスタリカ沖で見つかった海亀の8分間のビデオです。
 
6. 私たちに出来ることの例:

  • 外出する時は飲み物を入れた水筒を持参する。 ペットボトルの水の代わりに浄水器を水道につける。
  • スタバにはマグカップ持参(ストローと蓋辞める)  旭川などで作られる木のカップは一例
  • サランラップから木綿の布に蜜蝋を塗ったものやパラフィン紙で残った食品を包む
  • 紅茶のティーバッグもプラスチックのメッシュが使われているものあり。 茶葉で淹れるか、生分解する材料だけを使ったティーバッグへ
  • マイ弁当箱を持帰り弁当店に持参する。 その容器もプラスチック製でなく、生分解する竹などで作られたもの。マイ容器に入れて売ってくれない可能性も
  • カーテンは麻(リネン)や綿などの土に還る生地のものへ
  • 化繊の服から木綿、絹、麻の服へ

 

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