山上の説教…神からの力

2017.04.04

本田哲郎司祭

釜ヶ崎で活動する本田哲郎司祭

先日、大阪に行く機会があったので、前から訪ねてみたい方にアポ無しで伺ったことがありました。
 
以前から般若心経の解釈では、山本空外師のものに最も感激したことがありました。 一方、聖書の解釈では、本田哲郎司祭のものが秀逸だ、とかねてから思っていました。 山本空外師は、すでに鬼籍に入られていますが、本田司祭はまだお元気で大阪の釜ヶ崎で活動されています。
 
空外師は、サンスクリット語から直接翻訳をされているだけでなく、ご自身に体験を持っていらっしゃるので、言葉尻の解釈ではなく、その実態を言葉として引き出されます。
 

一方、本田哲郎司祭は、旧約聖書はヘブライ語、新約聖書はギリシャ語の原典に当って訳し直しています。 特にマルコ福音書から始まる新訳聖書の新日本語訳が素晴らしいと思いました。
 
この本田哲郎司祭は、司祭と言っても聖職者の荘厳な衣を纏っているわけでなく、丸首のシャツを着て、釜ヶ崎の住人への無償の散髪を週に3回、一回に20人〜30人の頭をバリカンで刈っていらっしゃる方です。 イタリアの12世紀の聖フランシスコから始まった、フランシスコ会の日本管区長をされたり、新共同訳聖書の編集者も勤められた方です。
 

今回は、活動拠点とされている『ふるさとの家』と言う所を訪ねていったものの、そこにいらっしゃらず、お電話でお話しさせていただくことは出来ました。 70歳半ばとは思えない、溌剌としたお声でお話しいただきました。

聖書を発見するこの本田司祭の聖書の翻訳は、オリジナルのギリシャ語から訳し出している、という言語的なことだけでなく、やはり釜ヶ崎での活動を通した、ご自身の実体験から紡ぎ出されている、というところが、秀逸さの秘密だとわかりました。

実際に、どんな風に翻訳が変わるのか、有名な『山上の説教』の部分で比較してみると、一番よくわかると思いますので、並べてみます。
 
{新共同訳聖書のマタイによる福音書第5章、山上の説教}
 
『心の貧しい人々は、幸いである、
天の国はその人たちのものである。
悲しむ人々は、幸いである、
その人たちは慰められる。
柔和な人々は、幸いである、
その人たちは地を受け継ぐ。』
 

{本田さんによる、山上の説教の翻訳だと…}
 
『心底貧しい人たちは、
神からの力がある。
天の国はその人たちのものである。
 
死別の哀(かな)しみにある人は、
神からの力がある。
その人は慰めを得る。
 
抑圧にめげない人は、
神からの力がある。
その人は地を受けつぐ。
 
解放をこころざして迫害される人たちは、
神からの力がある。
天の国はその人たちのものである。』

炊き出しに並ぶイエス

”炊き出しの列に並ぶイエス” by フリッツ・アイヘンバーグ

どうでしょうか。
 
本田さんのものを読むと、キリストが言わんとしていたのは、神からの力がどこから湧いてくるのか、ということなんだと納得がいきませんか。
 
神の力を得られることを願う気持ちが、私たちのお詣りや祈祷なのかも知れません。 しかし、その為に”心底貧しい境遇”になることも、”死別の悲しみ”を迎えることも、”抑圧される”必要もありません。
 

静坐や瞑想を通して私たちは、その大いなる力の風を感じる体験をします。 順風に帆をあげるように、その風に吹かれて私たちの人生航路は、揺るぎない喜びへと向かっていくことでしょう。

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