饒舌なる沈黙 ~ アーミッシュという生き方

2017.07.16

ハイウェイを走るアーミッシュの馬車

ハイウェイを走るアーミッシュの馬車

地平線までトウモロコシ畑が続く平地を、ひたすら車を走らせている。
 
ここは米国中西部の穀倉地帯。 米国第3の都市シカゴとお隣のアイオワ州まで、片道6時間の道のりを運転すること一年に数回
そんな平原を走っていると、突然黒い馬車が目の前に現れる。 一瞬、別の時代にワープしてしまったかのような錯覚に襲われる。
 
車のスピードを落として馬車の中を一瞬覗き込むと、長いあごひげをたくわえた男性が馬の手綱を握り、隣にボネットの帽子を被って黒づくめの奥さんが乗っている。
 
ハリソン・フォード主演の映画『目撃者』(原題は”Witness”1985年公開)を観た方はその姿が想像しやすいかと思います。
 
その映画の舞台になったのが、近代的な便利さに背を向け、昔ながらの電気製品もない生活を今も続けるアーミッシュと呼ばれる人たちとその集落でした。
 
洗濯機も乾燥機も使わないので、集落を通過すると洗濯物がたくさん干してあります。 乾燥機を使うのが当たり前の米国では、こう言う光景は普通まず見ません。 
 
電話も使わないと言うから、電話線も、そして電線も家に引き込まれていません。 
 
馬で畑を耕し、家畜を飼い、自給自足の生活を送り、祈りと信仰の生活を送っています。
 
当番がその頃、英語の個人レッスンを受けていた米国人男性は、普通のキリスト教徒だったにもかかわらず、このアーミッシュの人たちの中で半年暮らしたことがある、と言う一風変わった人でした。
 
このまるで中世から抜け出してきたような人たちが、どんな生活を送っているのか興味にかられ、なんとか彼ら彼女らの生活を身近に体験させてもらえないか、と米人教師にお願いしてみました。
 
言うまでもなく、このアーミッシュの人たちは見世物でこのような生活をやっている訳ではなく、観光客に対してとても警戒している、とは聞いていました。 
 
無理もありません、自宅の庭を覗き込まれ、畑の周りに陣取って、普段の日常生活を好奇な目で見られたくないのはよくわかります。
 
その英語教師の方が、彼らの中で長期に渡って生活させてもらったことは、信頼を勝ち取っていた証ですから、なんとか望みはあるかな、と駄目元の気持ちで頼んでみました。
 
すると、しばらくして3週間後に彼らの集会があるから、それにオブザーバーとして参加出来ることになった、と教えてくれました。

アーミッシュ

アーミッシュの長老達

指定された日に、英語教師と共に集会場に早めに行って彼らの到着を待ちました。 すると、あの馬車に乗って、黒づくめの人たちが集まってくるではないですか。
 
20人くらいでしょうか、全員が集まったと思えるのに、誰も一言も発しません。 司会者が誰かもわからない中、沈黙が支配します。 帽子を手にとって下を向いている人、手を組んで目を閉じている人、etc.。
 
すると30分位経ったでしょうか、いやそれ以上だったかも知れませんが、その時にはもう時間の感覚がなくなっていました。 誰かが、ようやく重い口を開いて『それはこうした方がいいと思う』と思えるような発言をしました。 
 
『ような』と言うのは、英語でもない、ドイツ語に近い彼らの言葉のようで、何を言っているのかわからなかったからです。 
 
すると、他の人も次々と口を開き、『それがいいだろう!』と思しきことを言い出しているようでした。
 
そして、全員が一言ずつ何か言うと、皆が帽子を頭に載せ、席を立って外に停めてある馬車に乗って、それぞれの家に散っていくのでした。
 
こちらは何が起こったのか、まったくもってよくわからない。 くだんの英語教師に解説してもらうと次のようなことでした。
 
村で話し合って決めなければならない問題が発生した時、アーミッシュの人たちは集会所に集まり、そしてただひたすら沈黙して過ごすのだそうです。 
 
その沈黙の中で、皆の考えがまとまるのをただひたすら待ち、皆の思考の波長が合った時に誰かがしゃべり出す。 
 
その時には、同調して皆の考えが一つになっているから、それを口々に確認し合って、それで決定が下されて、会合が終わるのだと。

"Witness"

映画『目撃者』より

沈黙には饒舌な議論以上に、考えをまとめてくれる大いなる力が秘められていたのでした。 
 
アーミッシュの人たちは、そのことを知っているので、コミュニティで決めなければならない問題が発生した時には、そういう会合を招集して、解決しているのでした。 
 
そのことがわかった時、鳥肌が立つような感動を覚えたものでした。
 
アイヌの人の集会に『ウコチャランケ』と言うものがあるそうです。 文字通りの意味は、お互いに思っていることを言葉として下ろし、皆に聞いてもらう、のだとか。 
 
アーミッシュの人も言葉が降りてくるのを、沈黙の中で待っているのでしょう。 そして、凄いのはその言葉が一つに収斂された段階で降りてくる、と言うこと。 
 
そう言えば、大自然は、一つの状況で必ず一つの答えしか出しません。 
 
『目撃者』の映画では、最後のクライマックスである、人質に銃を突きつけた犯人を降伏させたのも、声ひとつ発せず、棒切れ一つ持たずに、ただ集まって来ただけの、アーミッシュの人達の純粋な目線の力でした。
 
現代の私たちが失ってしまった宇宙との意識の繋がり方を、今も日々の生活で実践している人たちがそこには居ました。

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