空海の見た風景

2018.11.22

太龍寺今から20年ほど前に『大人の修学旅行』なる本を手にしていました。
 
北は知床から南は桜島まで、全国15カ所。 修学旅行で行ったような土地を大人になった目線で楽しむ、というトラベル・エッセイでした。
 
その全国15カ所のうち、著者をしてもう一度ぜひ行ってみたい、と言わしめていたのが、四国八十八ケ所のお遍路旅でした。
 
何が良かったかと言って、景色とかいうことよりも、知らない人でもお遍路とわかるとお茶を出してくれたり、みかんをくれたり、という『お接待』の文化にいたく感動したから、という趣旨のことが書かれていました。

お接待それが長年、頭の片隅に残っていて、いつか四国のお遍路をしてみたい、と思っていました。
 
それに輪をかけて、当番自身の長年の”空海ラブ”が半端ではないこともありました。
 
空海の書いたものの一節が抜き出されたのを目にする度に、この方の見た風景の地平線はただ事ではない、という思いを強くしていました。
簡単に言ってしまえば、深さというか、それが歴史上伝わる著名な僧とは明らかに違う、と思えてしまうのです。
 
ですから、小説家の司馬遼太郎が『空海の風景』という本で描く空海像には違和感を覚えました。
 
その中では、『機略にとんだ空海は嵯峨天皇に取り入るようにこれこれをした』と言った記述が出てくる度に、空海はそういうレベルと違うと思います、と声をあげそうになるほどです。
 
さて、今回念願叶って、その四国お遍路の旅をスタートすることが出来ました。
 
これまでのところ2回に分けて、88箇所のうち、26カ寺まで参拝することが出来ました。
 
当方にとっての前半のハイライトは、ズバリ2カ所です。
 
まずは、西の高野とも称せられる、第21番札所の太龍寺という標高500メートルほどの山の中のお寺でした。
 
ここには平成4年に完成したロープウエイがかかっていて、それでいっきに山の上の札所へ到達できます。
 
定番通りに本堂と大師堂でお参りを済ませ、いよいよ目的の『舎心ヶ嶽』(しゃしんがたけ)に山道を登ること15分ほど。

舎心ヶ嶽

舎心ヶ嶽の空海像

ありました岩の岬が。 そしてそこに何やら背中を向けたお坊さんの像が鎮座しています。
 
ここが空海が、『阿國大瀧嶽に登りよじ、土州室戸崎に勤念す』と書いた、前半部分の阿波の国の大瀧嶽の修行の地と言われるところ。
 
ここで19歳の空海が樹海とその先の太平洋を臨みながら、虚空蔵菩薩のマントラ(真言)を100万回唱えたのかと思うと、なんだか今もその波動が突き出した岩に染み込んでいるかのようです。
 
虚空蔵菩薩を本尊にしているお遍路のお寺でも唱えられるその真言はこちら=>
 
『ノウボウ アキャシャ ギャラバヤ オン アリキャ マリ ボリ ソワカ』
 
しかし、これは元のサンスクリット語から相当変化して伝えられてしまっています。
 
空海の時代、すでにインド僧が日本に来ていたので、空海もオリジナルの音で唱和していたのに違いないと思います。
 
そうだとすると、空海が口にしていた真言はこんな感じになるはず=>
 
『ナモー アーカーシャガルバーヤ オーム アリカルマリモーリ スワーハー』
 
だいぶ現代に伝わっている音と違うでしょう!
 
因みに”虚空蔵”とは、2節目に出てくる『アーカーシャガルバーヤ』を意訳して作られた言葉になりますね。
 
これを1日1万回。 100日間続ける修行やってみますか。
 
これは瞑想の体験に繋がるものがあります。
 
証明しろと言われてもできないので、あまり生理的な面から意識の体験を語りたくはありませんが、反復が自動的に行われていくと、脳の中で確実に変化が起こります。
 
それでは、いよいよ2つ目のハイライトに向かうとしましょうか。

御厨人窟

空海の見た空と海

24番の最御崎寺(ほつみさきじ)は室戸岬にありますが、その近くに空海の修行の洞窟、『御厨人窟』(みくろど)があります。
 
これがもう一つのハイライトなる『土州室戸崎に勤念す』の舞台となったところです。
 
明けの明星が口に飛び込む、という空海が悟りの体験をした場所としてあまりに有名です。
 
それは突然に来たというより、その前に100万回の真言を唱える行があり、その延長上に熟した実が自然に落ちるように起こったこと、と言えるのではないでしょうか。
 
先ほど、真言をひたすら唱えることで、脳の中に変化が起きてきたはず、と書きましたが、それがその人の臨界点に達した時、それまでとは全く違った風景と突然出会うことになります。
 
私たちも日々の瞑想を通して、何も考えない真空を作り出し、そこで”不要な考えや記憶”の断捨離が自動進行することで、爽やかな日々が少しずつでも、より明瞭になってくるはずです。
 
これからの残り62カ所、楽しみです。

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