ヨーグルトで腸内フローラ改善するの? ラッシー vs. バターミルク

2019.03.28

 腸内環境が肌の調子や様々な健康に密接に関わっていることがわかるようになり、ヨーグルトなどに多く含まれるビフィズス菌や乳酸菌への関心が一気に高まってきました。 

 今から30年ほど前にアーユルヴェーダ の脈診の大家と言われる先生に診断を受けた時の記録を見ていたら、そこに『バターミルクを積極的に取りなさい』と記載されていました。 

 当時はバターミルクのなんたるかの知識もまったくなく、ホールミルク(乳脂肪分を除去していない牛乳)を飲みなさい、ということだと勝手に勘違いしていました。 

  そこで今回は、アーユルヴェーダ のドクターから食事と一緒に飲むことをお勧めされる頻度の高い『バターミルク』なる代物が、一体何なのかを探っていくことにします。

 東京は原宿・表参道の、通称パンケーキ激戦区に昨年2018年9月に新たなパンケーキ(世代によってはホットケーキ)のお店がオープンしました。 その名も『バターミルク・チャネル・ニューヨーク』

 ニューヨークのブルックリン地区にある人気のレストランの日本一号店だとか。 バターミルク・チャネルとは、”バターミルク海峡”の意味で、ブルックリンとマンハッタン島の間にある流れの早い海峡の地名として実在します。 

  この海峡の名前がバターミルクなのは、ブルックリン地区がまだ農業地帯だったその昔、牛乳を対岸の消費地であるマンハッタン島に運ぶ際に、海峡の流れが激しくて樽の中の牛乳がチャッポンチャッポンする。 冷蔵技術もない時代、牛乳の中のヨーグルト菌で対岸に着いた頃には乳脂肪のバター成分が分離したバターミルクと呼ぶヨーグルトになっていたのだとか。

  その海峡の近所にオープンしたこのレストランでは、パンケーキを膨らませる重曹にバターミルクを加えて、よりフワフワにしている、というのが売りだそうです。 他にも人気メニューのフライドチキンも、バターミルクに肉を浸けておくことで柔らかくしているのだとか。

  小麦粉を膨らませる料理を作ろうとした時に、パンを作る時のイースト菌は発酵を待たなくてはならないので時間と手間がかかります。 しかるに19世紀の後半から米国で発売された重曹を使うと、その場で小麦を膨らませた料理が作れるようになりました。 日本で市販されているホットケーキミックスなども、重曹がベーキングソーダとして使われています。

  この重曹はアルカリ性な訳ですが、これを酸性のものと混ぜると更に炭酸ガスを発生させるので、よりフワフワのパンケーキになります。 酢が簡単に手に入らない時に重宝されたのが、ヨーグルト化によって乳酸や酢酸で酸性化しているバターミルクだった、という訳です。

  ここで100年前のニューヨークでどうやって朝絞られた牛乳が、対岸の消費地であるマンハッタンへ運ばれたか。 今と違う状況を考えてみると、必要な条件が見えてきます。

  • 冷蔵技術がなかったので、夏場などは牛乳が腐りやすい。 そこでヨーグルト化していると酸性なので、腐敗を抑制出来た。
  • ホモゲナイズド(乳脂肪分が粉砕されて分離しない状態)されていない牛乳だった。 現在日本で市販されている牛乳は99.9%が、ホモゲナイズされた牛乳で、乳脂肪分子が元の約500分の1にまで細かくされています。 逆にこれをされていない(ノンホモと表示されています)牛乳を置いておくと、上の方に乳脂肪の層が浮いてきます。 この層のことが本来『クリーム』と呼ばれるものです。 その昔、イギリスの片田舎の民宿に泊まった時に、瓶に入って配達された牛乳の上にこのクリームを発見。 その家の子供が小指を突っ込んでそれを美味しそうに舐めていました。 
  • パスチャライズ(牛乳を熱して雑菌を除去するプロセス)されていない牛乳だった。 日本で市販されてる牛乳は、世界でも珍しい高温殺菌(120℃、2秒)されています。 世界の標準は、”低温殺菌”と呼ばれる65℃で30分です。 この過程がないことで天然のヨーグルト菌も残ることが出来ますし、一方で腐敗をもたらす菌も残ることになります。

  この激しい海流の海峡を渡ってマンハッタンに配達された牛乳は、これらの3つの条件の中でヨーグルト化し、それが揺れる渡り船に撹拌されることで乳脂肪分が分離していった、という訳でした。 そして、バターなどに加工できる乳脂肪分を取り除いた残りの部分が『バターミルク』と呼ばれています。

  バターミルクがなんなのか、ようやくたどり着きました。 当番が通うインドのアーユルヴェーダ のクリニックのキッチンでは、朝に絞った牛乳がノンホモ、ノンパスチャライズの状態で配達されてきます。 それにヨーグルト菌を投入して一晩置くと、気温がちょうどよいので、翌朝にはヨーグルト化しています。 それをブレンダーで撹拌すると、次第に乳脂肪分が固まりとなってきます。

  その塊を丁寧に取り除き、その残りのヨーグルト液に3倍の水を加え、塩、クミン、生姜などを加えたものが、『バターミルク』として昼食の際に必ず登場します。 

インドの家庭では昔からこのように乳脂肪分を分離させていました

 家電製品が登場してからはブレンダーで撹拌して乳脂肪を取り除きます。 しかし、インドの田舎の家庭の中では今でも昔ながらの壷の中に入れた牛乳を、木製の撹拌器で紐をギッタンバッコンと引っ張って分離するのを目撃したこともあります。 

  一方で、インドレストランでは必ずメニューに登場するラッシーという白い飲み物があります。 これは今話題にしているバターミルクと果たして別物なのか?

  結論から言うと別物ですが、材料はバターミルクで同じ、ヨーグルト化した牛乳の『漬け物』。 この乳脂肪分を取り除いたバターミルクに、水も2倍程度にして、砂糖などの甘味を加えたものがラッシーとして供されています。 

街中のラッシー屋

  だから、甘くてトロッとしているのが普通です。 これは食事と一緒にとるものではなく、おやつ的な感覚で食間にとるもので、インドの街中にあるラッシー屋さんには、地元の人が群がっていることが多いです。

  ですから、日本のインドレストランのメニューにラッシーとあるのはほとんどが甘い飲み物なので、『ソルティー・ラッシーありますか?』と注文してみると面白いです。

  メニューにはなくても、すぐにわかりましたと作ってくれるお店は再訪したくなります。 この氷を入れないソルティーラッシー(塩ラッシー)が、食事と一緒にとる『バターミルク』になります。 

  このバターミルク、元々あった乳脂肪分が取り除かれているので、身体に入った時に牛乳の”知性”が失ったものを取り戻そうと働き、余分な脂肪を取ってくれるのだとか。 消化を助け、腸内環境を整えてくれる飲み物として、インドご飯でもどんなご飯でも格好のお供になること請け合いです。

 それでは最後に自分で牛乳からヨーグルトを作って、それから乳脂肪を分離してなどもってのほか、と言う方用の簡易版バターミルク2人分の作り方。 

  • プレーン無脂肪ヨーグルト大さじ6杯(出来れば生乳100%で作られ、糖類の入っていないもの。)
  • 湧き水などのH2O水、250cc
  • 岩塩を少々
  • クミンパウダーを少々
  • 生姜のすりおろしを少々

これらをしっかりとブレンダーなどで混ぜ合わせ、ミントの葉を数枚ほど盛りつけて出来上がり。 冒頭の写真は更にサッとギーで炒めたクミンシードをパラパラと上からまぶしてあります。 Enjoy!

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